PBP初の訂正容認審決

2016年04月07日 20:31
 
 先週、プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームの訂正審判の認容審決が出ました。
 https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/pbp_teisei_sinpan.htm
 
 本審決では、まず、H27.6.5最高裁判決をベースに
  ・「物」の発明であること
  ・特許請求の範囲に「製造方法」が記載されていること
 の当て嵌めをし、
 
 その結果、明確性要件(36条6項2号)を欠くおそれがあり、それに対する当該訂正は126条第1項3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当するとして、訂正の一つの要件を満たすと判断しています。
 
 今回の審決のポイントはその後です。条文では126条6項の当て嵌めです。
 
第百二十六条
6  第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。
 
 本審決では、2つの観点からこの当て嵌めを行っています。
  ・技術的意義
  ・第三者の不測の不利益
 
 「技術的意義」については、訂正前と訂正後で発明の「課題」と「解決手段」に変更がなく、よって実質的な変更ではないと判断しています。
 
 また、「第三者の不測の不利益」については、訂正前と訂正後の「第三者の実施できる範囲」に着目し、第三者が訂正前に実施できたことが訂正後に実施できなくなることがないことから、実質的な拡張や変更ではないと判断しています。
 
 本審決では他の訂正要件についても当て嵌めを行っていますので、審判制度の「良い教材」になると思います。
 
 訂正は補正と共に出題頻度が高い制度と言えます。
 
 PBP最高裁判決でも判断保留とされた論点であるため、要件・効果の視点からの条文の理解、再現力の向上を図っておくことをお勧めします。
 
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