秘密意匠の権利行使の論点

2015年04月27日 20:27

 H26年度の短答本試、第58問(第1枝)に「秘密意匠に係る意匠権の権利行使(差止請求)」の問題が出題されています。

(イ) 秘密意匠の意匠権についての専用実施権者は、秘密請求期間中に当該専用実施権を侵害した者に対して、その意匠に関する意匠公報を提示して警告をした後であれば、差止請求権を行使することができる。

 秘密意匠に係る権利行使(差止請求と損害賠償請求)については、37条3項、40条は必須条文です。

第三十七条  意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
3  第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第一項の規定による請求をすることができない。


 H26短答本試では、特許法65条との相違が訊かれていることが理解できていれば、解答は容易ですね。

特許法第六十五条
特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、・・・。


 秘密意匠に係る意匠権の権利行使(差止請求)には、「特許庁長官の証明を受けたもの」であることが要件となる点の理解は重要です。

 さて論文本試では、さらに、警告を受けた者が、14条4項所定の請求を行った場合を事例とする設問が想定されます。この場合、意匠権者は改めて「特許庁長官の証明を受けたもの」を提示して警告する必要があるのでしょうか?

第十四条
4  特許庁長官は、次の各号の一に該当するときは、第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠を意匠権者以外の者に示さなければならない。
四  利害関係人が意匠権者の氏名又は名称及び登録番号を記載した書面その他経済産業省令で定める書面を特許庁長官に提出して請求したとき。


 青本(19版)に、37条3項の制度趣旨について、次のように説明されています。

<意37条3項(青本19版)>
 「秘密意匠と同一または類似の意匠を善意で実施している者に対して、いきなり差止請求を行うことができるとしたのでは苛酷にすぎると考えられ、・・・」


 条文通りに「特許庁長官の証明を受けたもの」を提示して警告することを要するとしても良いし、本趣旨を理由として「不要」としても良いでしょう。

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/pdf/h26benrisi_tan/question.pdf