独占通って何?(H23改正見送り)

2014年12月26日 20:36

 H23改正では見送られましたが、引き続き、独占的ライセンス制度に関する見直しが検討されています。

 独占的ライセンスの一つとして「独占的通常実施権」なるものがあります。法上は通常実施権に過ぎませんが、ライセンシー以外に対しては実施許諾しないとするライセンス契約で、実務上、独占的通常実施権を許諾することも少なくありません。

 また、専用実施権の設定の登録前も「(完全)独占的通常実施権」が許諾されている状態と言えます。

 さて、独占的通常実施権で問題となるのは以下の4点です。

1.差止請求の可否
2.損害賠償請求の可否
3.過失の推定(特103条)の適用
4.いわゆる当然対抗制度(特99条)の適用


1.について、
 固有の地位に基づく差止め請求は認められないとするのが通説です。独占的と言えども、排他性はなく不作為請求権に過ぎないからです。債権者代位による差止め請求については、特許権者に侵害排除義務がある場合に認められるという考えがあります。改正議論では、当該義務がなくても差し止め請求を認めるといった議論がされているようです。

2.について、
 損害賠償請求は認められるというのが通説です。「独占性」を害されたことによる損害を賠償することができると考えられています。

3.について、
 意匠法の判例ですが、受験生が勉強対象としている判例がありますので、判例のキーフレーズを再現できるようにしておきましょう。

【大阪高判平成12年12月01日】独占通侵害時の過失の推定

 上記判例の原文(一部)は、こちらを参照ください。
https://www.mesemi.com/products/%E3%80%90%E5%A4%A7%E9%98%AA%E9%AB%98%E5%88%A4%E5%B9%B3%E6%88%9012%E5%B9%B412%E6%9C%8801%E6%97%A5%E3%80%91%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E9%80%9A%E4%BE%B5%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AE%E9%81%8E%E5%A4%B1%E3%81%AE%E6%8E%A8%E5%AE%9A/

4.について、
 H23改正で、いわゆる「当然対抗制度(特99条)」が導入されましたが、独占的通常実施権の「独占性」まで第三者に対抗できる訳ではありません。この点の理解は重要です。

(通常実施権の対抗力)
第九十九条  通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。



その他
 102条の「損害の額の推定等」の適用についての議論(論点)があります。ここまでは出題されないと思いますが、万全を期すなら、102条の適用可否まで勉強しておくことをお勧めします。

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2013_10.pdf