パリ条約との関係における国内優先権の制度趣旨

2021年09月14日 13:00

国内優先権の制度趣旨は、青本に以下の通り2つの観点から説明がされています。趣旨問題が出た場合には、この2つの観点からの記載で対応すれば良いでしょう。


青本(趣旨①):
本制度の導入により、第一に、基本的な発明の出願の後に、当該発明と後の改良発明とを包括的な発明としてまとめた内容で特許出願を行うことができ、技術開発の成果が漏れのない形で円滑に特許権として保護されることが容易となり、

青本(趣旨②):
第二に、先にされた特許出願又は実用新案登録出願を基礎として優先権を主張して特許協力条約(PCT)に基づく国際出願において日本国を指定(PCT八条⑵⒝にいう自己指定)した場合にも、その指定の効果が我が国において認められることとなった。


では、「パリ条約との関係における国内優先権の制度趣旨」が問われた場合はどうでしょうか?


国内優先権制度の改正年度が昭和60年と古いため、改正法解説書に当たることもできず、出題された場合には手こずるかもしれません。


さて、趣旨①についてですが、日本国へ優先権主張を主なう改良発明の出願をしようとした場合、基礎出願が例えば米国であればパリ条約に基づく優先権が使えます。一方、基礎出願が日本の場合には、パリ条約に基づく優先権が使えません。パリ優先の主張要件の一つに「他の国(第一国出願と第二国出願は別の国)」があるからです。


このように、主張出願が日本国の場合、第一国(基礎)出願が外国の場合と日本の場合で、不均衡が生じることになり、その是正のために国内優先権制度が設けられています。


次に、趣旨②ですが、先ほど述べた通り、パリ優先権では「他の国」の要件があります。特許協力条約は、パリ条約の特別取極(パリ条約19条)であり、国際出願の優先権はパリ条約上の優先権となります。


PCT第八条 :優先権の主張
(1) 国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。
(2)(a)(b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、工業所有権の保護に関するパリ条約のストックホルム改正条約第四条の定めるところによる。


したがって、国際出願においては、原則として、同一国間での優先権の主張(いわゆる自己指定)ができません。


この例外を規定しているのが同条(2)(b)です。


PCT第八条 :優先権の主張
(2)(b) いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。


国内出願制度を設けてその効果(特41条2項)を規定したことで、国際出願制度におけるいわゆる自己指定ができるようになりました。

弁理士の論文試験では、「問われていることを簡潔に書く」ことが重要ですので、上記内容をベースに「簡潔記載」の練習をしておきましょう!


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