パラメータ特許って何?(サントリーvsアサヒ)

2015年03月14日 09:29

 サントリーホールディングスがアサヒビールを相手に、ノンアルコールビールに係る特許権を侵害したとして訴えを提起してるようです。

 記事にある情報から検索してヒットした特許公報は以下です。

【特許番号】特許第5291257号(P5291257)
【登録日】平成25年6月14日(2013.6.14)
【発明の名称】単糖類及び二糖類の比率が高いノンアルコールのビールテイスト飲料
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
【特許請求の範囲】 (注意:請求項1のみ記載)
【請求項1】エキス分の総量が0.1~0.5重量%であり、三糖類の重量に対する単糖類及び二糖類の重量の合計の比(単糖類及び二糖類のw/v%の合計/三糖類のw/v%)が2.5~11である、ノンアルコールのビールテイスト飲料。


 いわゆる「パラメータ特許(発明)」と言われるものです。受験生は「数値限定発明」の方が馴染があると思います。審査基準でも取り上げられている観点で、「サポート要件」、「実施可能要件」とも呼ばれている内容です。

<審査基準>
2.2.1.3 第 36 条第 6 項第 1 号違反の類型
(3) 出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合。

例10:請求項には、数式又は数値を用いて規定された物(例えば、高分子組成物、プラスチックフィルム、合成繊維又はタイヤ)の発明が記載されているのに対し、発明の詳細な説明には、課題を解決するために該数式又は数値の範囲を定めたことが記載されているが、出願時の技術常識に照らしても、該数式又は数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例や説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合。


 さらに、審査基準では上記の例外についても触れています。

<審査基準>
(注)数値範囲に特徴がある場合ではなく、単に望ましい数値範囲を請求項に記載したにすぎない場合には、発明の詳細な説明にその数値範囲を満たす具体例が記載されていなくても、本類型には該当しない(上記(c)参照)。(参考:知財高判平 21.9.29(平成 20(行ケ)10484 審決取消請求事件))


 パラメータ特許に関する判例は多数ありますが、その中でも著名な裁判例は、大合議判決「偏光フィルム事件」でしょう。詳細は情報ソース(リンク先)を参照ください。

<偏光フィルム事件>
 二つの技術的な変数(パラメータ)を用いた数式で特定した物を構成要件とする特許に対し、特許法36条5項1号の規定(サポート要件)に適合しないとされた判決

 パラメータ発明(数値限定発明)は、受験向けの出題としては分野が限定される点等で、出題の可能性はそれほど高くはないと思います。しかし、裁判例も多く実務上は極めて重要でありますので、上記の審査基準のキーフレーズ(原則と例外)くらいは再現できるように準備しておくと良いでしょう。

情報ソース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150310-00000015-fsi-bus_all
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_i-1.pdf
https://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/17-10042.pdf