「特許を受ける権利」の論文題材(口述3日目から)

2014年12月07日 12:21

 H26口述3日目の特許法のテーマが「特許を受ける権利」でした。口述のテーマは出題の可能性が高まるので、十分に勉強しておきましょう。

 また、職務発明の改正法議論も「まとめ」に入ったようですね。改正法の「まとめ」について興味のある方は「情報ソース」のリンク先を参照ください。

 さて、特許を受ける権利を規定している条文は何条でしょうか?

第二十九条
産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。


 本条柱書きを根拠に、論文では、良く「特許を受ける権利は発明者に原始的に帰属する」と記述します。改正法議論では、職務発明の規定(35条)が議論されていますが、特許を受ける権利を規定するコア条文である29条柱書きも改正されることになります。H27改正法の施行後は、例えば、次のような記載になるのでしょうね。

職務発明に係る特許を受ける権利は原則として「使用者」に原始的に帰属する。使用者が望む場合には「発明者」に原始的に帰属させることもできる。

 ところで、短答試験は「条文の要件・効果」の理解を問う問題ですが、論文試験は「条文の使い方」についての理解を問う問題です。特許を受ける権利(29条柱書き)に関連する条文について、その使い方、すなわち、「○○の場合」で整理すると以下になります。

33条  特許を受ける権利が共有に係る場合(譲渡)
34条  特許を受ける権利が二重承継された場合
35条  特許を受ける権利が予約承継された場合
38条  特許を受ける権利が共有に係る場合(出願)
132条 特許を受ける権利が共有に係る場合(審判請求)


 「特許を受ける権利」の関連条文に関する出願も狙われる可能性が高いと思いますので、よく理解しておきましょう。事例問題で、特許を受ける権利がどうなっているのか? 特許を受ける権利をどうしようとしているのか? といった整理から、適用条文を列挙できるようにしておきましょう。

 その他、「特許を受ける権利」が出てくる条文としては、以下があります。本試の前に、条文チェックおきましょう。

30条
34条の2
34条の3
34条の5
49条
74条
104条の3
123条
193条

 最後に、他法域の関係として、商標法との相違の理解も重要です。商標法には、「特許を受ける権利」対応する「商標登録を受ける権利」というものは存在しません。商標は選択物であり創作物ではないからです。ただし商標登録出願により、出願人には「商標登録出願により生じた権利」が生じます。これにより、金銭的請求権(13条の2)や、いわゆる冒認の状況が起こり得ます。

(設定の登録前の金銭的請求権等)
商標法第十三条の二 
商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。


 改正法議論が活発化し、口述テーマにもなっています。職務発明と特許を受ける権利の関係について理解を深めておくことを強くお勧めします。

 その他の「29条1項柱書き」についての「学習ポイント」は、こちらを参照ください。特許を受ける権利の発生要件としての「産業上の利用性」および「法上の発明」についても狙われる可能性があります。
https://www.mesemi.com/h27%E8%AB%96%E6%96%87%E7%AA%81%E7%A0%B4%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88/

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou010/02.pdf