著作権法改正から狙われる条文は?

2015年03月03日 21:28

 独占的通常実施権者に特102条3項の実施料相当額の損害賠償請求が認められるのか否かについての論点があります。

 地裁レベルではありますが、「認められる」とする判例が存在します。

【東京地判平成17年05月31日】独占通と102条3項
 特許法102条3項は,特許権者又は専用実施権者が侵害者に対して,特許発明の実施に対して受けることのできる実施料相当額の損害の賠償を受けることができる旨を定めているもので,特許権者又は専用実施権者の保護のため,概ね賠償額の低限度を保障する趣旨に出たものである。独占的通常実施権者は,当該特許権を独占的に実施して市場から利益を上げることができる点において専用実施権者と実質的に異なるところはないところ,同項の趣旨は,独占的通常実施権者にも妥当するから,独占的通常実施権者が侵害者の実施行為によって受けた損害についても,同条項を類推適用することとする。


 さて、H27年1月1日に、H26改正著作権法が施行されました。主たる改正は、電子出版物の一般化に伴う「出版権」の権利拡張ですが、同時に、再実施権の許諾が認められることになりました。

(出版権の内容)
3  出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製又は公衆送信を許諾することができる。


 また、同時に、損害額の推定等の規定、特許法で言うと102条3項に対応する規定が改正されました。

(損害の額の推定等)
第百十四条
3  著作権者、出版権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。


 ポイントは、「出版権者に実施権の許諾を認めたのと同時に、実施料相当額の損害賠償を認めた」点にあります。

 今回の著作権法の改正を踏まえると、再実施権の有無により実施料相当額の損害賠償請求の可否を認める考え方の方が、知的財産法の基本的な考え方のように思います。

 論文本試向けとしては、受験会場で考えるのではなく、どちらの説を採用して書くのか事前に決めておくことが重要です。

 その他、過去の「独占通」の記事はこちらを参照ください。
https://www.mesemi.com/news/%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E9%80%9A%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95%EF%BC%9F%EF%BC%88%EF%BD%88%EF%BC%92%EF%BC%93%E6%94%B9%E6%AD%A3%E8%A6%8B%E9%80%81%E3%82%8A%EF%BC%89/

情報ソース
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1348813.htm