職務発明の二重譲渡(H27改正)

2016年03月03日 20:29
 
 H27改正法解説書では、「職務発明に係る特許を受ける権利の二重譲渡の問題が解決」と解説されています。
 
特許を受ける権利が共有に係る場合の問題及び二重譲渡問題を解決し、職務発明の特許を受ける権利の帰属の不安定性への対応を行うべく、従業者等がした職務発明について、契約等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利はその発生時から使用者等に帰属する旨を規定した。
 
 それでは、改正後は「職務発明に係る特許を受ける権利のニ重譲渡」は起こり得ないのでしょうか?
 
 まず、新設35条3項ですが、条件付きで「特許を受ける権利が使用者等に原始的に帰属」する旨が規定されていますが、本条件に該当しなければ、従業者がした職務発明に係る特許を受ける権利は従業者に原始的に帰属することになります。
 
第三十五条
3 従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。
 
 そして、特34条の改正はされておらず、すなわち、特許法は改正後も二重譲渡を「予定」しています。
 
第三十四条  特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
 
 したがって、H27改正後も「職務発明に係る特許を受ける権利の二重譲渡」は起こり得ることになります。
 
 レアケースかも知れませんが、誤解なきよう、34条含めて理解を深めておきましょう。
 
「似て非なる条文集(H27改正)」はこちらで公開しています。
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