構成物品に類似する出願は拒絶?

2015年05月03日 19:06

 H26年度の短答本試、第15問(第4枝)に「組物からの構成物品の出願」の問題が出題されています。

(ニ)甲が、「一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンセット」の組物の意匠登録出願Aをしたところ、組物全体として統一がないことを理由とする拒絶査定の謄本の送達がなされた。このため、拒絶査定不服審判の請求をし、当該審判の係属中に、甲 が、A の 一部である飲食用ナイフと同一の意匠についての意匠登録出願Bを行った。その後、拒絶査定を取り消す旨の審決がなされ、確定した場合であっても、Bは、Aの存在を理由に拒絶されることはない。

 3条の2の適用可能性を問う問題です。

第三条の二  意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

 本事案では意匠公報が発行されることになりますが、出願Bは、同一出願人による公報発行前の出願に当たるため、本条「ただし」の追加(H18年改正)により、拒絶の対象とはならなくなりました。短答本試ではこの点の理解が問われています。

第三条の二(つづき)
ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。


 「ただし書」の追加の趣旨(の一つ)は「同一出願人の場合は権利の錯綜の問題が生じない」からになる点も併せて覚えておくと良いでしょう。

 論文の出題としては、「飲食用ナイフと類似の意匠についての意匠登録出願B」を「拒絶理由通知 and/or 拒絶査定」に対して行うケースを想定し、それぞれの場合での出願Bの留意点および帰趨を問う問題が考えられます。

 3条の2は再び狙われる可能性のある条文です。この機会に「ただし書」の理解をしっかり勉強しておくことをお勧めします。

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/pdf/h26benrisi_tan/question.pdf