専利法との相違(侵害系)

2015年02月05日 23:31

 出願の件数および増加率が世界一となった中国の知財政策には、凄まじさを感じます。侵害事件も相当多いと聞いています。

 さて、中国特許法(専利法)と日本国特許法の違いについては国内でも研究が進んでいると思いますので、弁理士の論文試験で、その相違点が狙われる可能性があります。

 侵害系において、日本国特許法に対する中国特許法の特徴(相違点)は以下となります。

(1)実用新案権による権利行使が活発
(2)先使用権の実施可能範囲が狭い(経済説)
(3)損害額が二極化
(4)無効の抗弁はないが公知技術の抗弁が使える
(5)均等の「非本質部分」の要件がない

 ここでは、上記(3)について、論文本試で狙われそうな観点を説明しておきます。

 日本国特許法では102条2項の規定に関してです。侵害者の利益額を特許権者の損害額と推定する規定です。

<日本国特許法102条>
2  特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。


<中国専利法65条>
第六十五条 特許権侵害の賠償金額は、権利者が権利侵害によって被った実際の損失に応じて確定する。実際の損失を確定することが困難である場合、権利侵害者が権利侵害によって取得した利益によって確定することができる。(以下省略)


 相違点の一つ目は「利益の定義」です。中国は純利益で、日本は限界利益が通説です。したがって、少額となる純利益説を採っている中国では一般的に損害賠償額が少額になります。

 相違点の2つ目は、「推定規定」か否かです。シュナイダー事件(実用新案権に基づく権利行使)では当時の金額で43億円の賠償額判決が出ました。高額賠償額の判決が出るのは、中国特許法は「推定」規定では無いことが原因にあります。つまり、日本の特許法は「推定規定」なので、特許権者の実施能力の限界で「リミッター」がかかりますが、中国ではそれがなく、侵害者の実施能力が高ければ高いほど(例えば、外国企業)、高額賠償の請求が可能になる法制度となっています。

 相違点の3つ目は、「3倍賠償」の有無です。中国専利法の改正が進んでいますが、故意侵害では2~3倍賠償の規定が追加される予定です。さらに高額賠償になる可能性があります。

 今年の論文本試では102条2項は要注意です。特許権者の実施の要否につての大合議判決(ごみ貯蔵機器事件)と併せて訊いてくる可能性がありますので、十分に理解を深めておくことをお勧めします。

<ごみ貯蔵機器事件>
 特許法102条2項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であって,その効果も推定にすぎないことからすれば,同項を適用するための要件を,殊更厳格なものとする合理的な理由はないというべきである。したがって,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきであ(る)。


情報ソース
http://j.people.com.cn/n/2015/0112/c95952-8834862.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150120-00000053-rcdc-cn

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