大合議判決(延長と均等)

2017年01月22日 19:04

 約10か月ぶりに「大合議判決」がありました。


 平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件 

 https://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html


 存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲についての解釈基準が示されています。


 今回は、論文本試を睨み、「検討の順番」と「均等論の適用」の観点から、ポイントを確認することにしましょう。


 まず、「検討の順番」ですが、以下が妥当だと考えられます。


 (1)イ号製品が特許発明の技術的範囲に属するかどうかの検討

 (2)68条の2に規定される「物」と同一又は実質同一なものに含まれるかどうかの検討


 技術範囲に属していなければ、延長登録された特許権の効力範囲を議論する必要もないからです。


 この点、「本件においては,法68条の2の延長登録された特許権の効力範囲についての判断が先行したが,これは本事案の経緯とその内容に鑑み,そのようになったにすぎず,通常は,まず,相手方の製品が特許発明の技術的範囲に属するかどうかを先に判断することも検討されるべきである。」と判事されていることからも明らでしょう。



 次に、「均等論の適用」ですが、上記(1)と(2)の場合で解釈が異なる点に注意が必要です。


 上記(1)の技術的範囲に属するか否かは均等論の適用を受けます。一方で、上記(2)では均等論の適用は受けません。


 後者については、以下のように判事されています。


 「法68条の2の実質同一の範囲を定める場合にも,この要件を適用ないし類推適用することができるか否かが問題となる。しかし,特許発明の技術的範囲における均等は,特許発明の技術的範囲の外延を画するものであり,法68条の2における,具体的な政令処分を前提として延長登録が認められた特許権の効力範囲における前記実質同一とは,その適用される状況が異なるものであるため,その第1要件ないし第3要件はこれをそのまま適用すると,法68条の2の延長登録された特許権の効力の範囲が広がり過ぎ,相当ではない。」

 

 ただし、第5要件については、以下のように言及されています。


 「ただし,一般的な禁反言(エストッペル)の考え方に基づけば,延長登録出願の手続において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合には,法68条の2の実質同一が認められることはないと解される。」


 大合議判決では、上記以外にも「実質同一」の解釈基準も示されています。


 医療関係の受験生に有利になるので、そこまでは出題されないと思いますが、余裕のある受験生は、判例要旨に当たって確認しておきましょう。


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