商15条の3への対応措置は?

2018年09月30日 16:01

 商標法の基本問題の一つに、4条1項11号の事例問題があります。


(商標登録を受けることができない商標)
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの


 論文試験の出題パタンとしては、拒絶理由の該否検討と拒絶理由通知への対応措置を問う問題に分けられます。

 拒絶理由の該否検討は、4条1項11号の要件定立と当て嵌め力が試されます。「他人、先願先登録、同一類似」の3つの要件で覚えておくと良いでしょう。

 一方の拒絶理由通知への対応措置は、上記3要件に対応して、「①もらう、②つぶす、③かわす」の3観点で検討することになります。


 さて、注意が必要になるのが、15条の3の事例問題です。

(拒絶理由の通知)
第十五条の三 審査官は、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であつて、その商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるときは、商標登録出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該商標登録出願が第十五条第一号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。


 15条の3の要件は、「他人、先願、同一類似」の3つとなり、4条1項11号の要件はほぼ同じですが、先願が未登録の状態で受ける拒絶理由通知と理解できます。


 それでは、拒絶理由通知への対応措置はどうでしょうか?

 3つの対応策「①もらう、②つぶす、③かわす」の枠組みは同じですが、拒絶理由が4条1項11号と15条3では、その具体的な対応策が異なってきます。


 まず、対応策「①もらう」については、4条1項11号では先願に係る権利の「移転」になりますが、15条の3では先願の「出願人の名義人変更届け」となります。

 次に、対応策「②つぶす」について。

 4条1項11号では、時期に応じて取り得る措置が異なります。無効審判、取消審判が中心的な対応となりますが、先願の登録から年月が経っていない場合は、異議申し立ての検討が加わります。逆に登録から年月が経っている場合は除斥期間の適用についての検討も必要となります。一方の15条の3の場合ですが、先願の権利が発生していませんので、対応策としては、情報提供(商施規19条)一本になります。

商標法施行規則
(情報の提供)
第十九条 商標登録出願があつたときは、何人も、特許庁長官に対し、当該商標登録出願に関し、刊行物又は商標登録出願の願書の写しその他の書類を提出することにより当該商標登録出願が商標法第三条、第四条第一項第一号、第六号から第十一号まで、第十五号から第十九号まで、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項の規定により登録することができないものである旨の情報を提供することができる。ただし、当該商標登録出願が特許庁に係属しなくなつたときは、この限りでない。


 最後に、対応策「③かわす」については、両者の相違はありません。拒絶理由の対象となっている「指定商品・役務の削除補正」での対応となります。


 4条1項11号は弁理士の論文試験では頻出問題です。今年度の論文試験でも、マドプロを絡めた4条1項11号の問題が出題されていますので、確認しておきましょう。


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