分割要件の一つは無意味?

2016年01月04日 19:32
 
 分割の客体要件(条文)は以下になります。
 
第四十四条
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 
 「客体要件の導き出し方」はさておき、分割に係る新たな特許出願の「客体要件は2つ」と記憶している受験生も多いと思います。
 
 特許法審査基準では、以下の2つが要件として列挙されています。
 
(要件 1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
(要件 2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
 
 ところで、上記要件1を満たさないケースは通常あるのでしょうか?
 
 この点、審査基準に解説がされています。
 
(要件1)は、通常、満たされている。 
(説明) 通常、明細書等からは多面的、段階的に様々な発明が把握されるから、明細書等には二以上の発明が記載されているといえる。原出願の明細書等に記載された二以上の発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされることとは、原出願の明細書等から把握されるあらゆる発明が分割出願の特許請求の範囲に記載されることである。しか し、そのようなことは通常考えられない。よって、(要件 1)が満たされていないことは、 通常考えられない。 したがって、単に分割出願の特許請求の範囲の記載が原出願の特許請求の範囲の記 載と同一であることのみでは、(要件 1)が満たされていないことにはならない。
 
 分割出願は、特許請求の範囲の一部を抜き出すイメージがあるため、上記説明を読むと少々違和感を感じます。
 
 しかし、条文を読めば、確かに「特許出願の一部を」と規定されていて、「特許出願に係る発明の一部」や「特許請求の範囲に記載された発明の一部」ではないことが分かります。
 
 とはいえ、論文で分割の要件検討の問題が出たら、「素直に」上記2要件の当て嵌めを忘れないようにしましょうね。
 
「カフェ勉」情報はこちら。次回、1月10日(日)、基礎編「特殊な出願(分割等)」です。
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