商標法(過去問)

H26過去問 弁理士 論文 商標法 【問題Ⅰ】

商標法における登録主義について以下の設問に答えよ。
解答に際して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。
(1)商標法における登録主義について簡潔に説明し、登録主義が採用されている理由を
述べよ。
(2)登録主義との関係において、いわゆる先使用権が認められている理由を述べよ。


 いわゆる一行問題ですね。解答としては青本の記載の再現で良いでしょう。配点が40点ですから、1ページ半の記載ボリュームが目安となりますが、【問題Ⅱ】の答案構成で多項目記載となることから、1ページ前後での記載にとどめることが必要です。

 「解答に際して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。」は商標法の問題では枕詞のようなものですが、逆にこの記載がない場合は、「マドプロが絡んでいる」というヒントですので、論文の本番では必ずこの考慮除外の有無をチェックするようにしましょう。


H26過去問 論文 商標法 【問題Ⅰ】 (1)

(1)商標法における登録主義について簡潔に説明し、登録主義が採用されている理由を
述べよ。

 

 「簡潔に説明」とありますから、青本3条にある定義 「登録主義とは実際に使用をしていなくても一定の要件さえ満たせば商標登録を受けられる法制をいう」を再現する程度で良いでしょう。

 「採用理由」は青本3条にある「登録主義においては、現実に商標の使用をしていることを商標登録の要件とすると、折角使用をしてその商標に信用が蓄積しても、出願した場合に不登録理由があることによって不登録となるような事態が予想されるから、あらかじめ使用者に将来の使用による信用の蓄積に対して法的な保護が与えられることを保証すべきであり、そのためには現実にその商標の使用をする予定のある者には、近い将来において保護に値する信用の蓄積があるだろうと推定して事前に商標登録をすべきだというのである。そして、一定期間以上使用をしなければ事後的に商標登録を取り消せばよいというのである。」の記載をベースに、

 (1)登録主義の他に、使用により商標に化体した業務上の信用を保護する法制として使用主義があるが、

 (2)使用主義では問題(上記青本記載内容)があるため、

 (3)登録主義の問題を事後的に解決する法制(不使用取消審判50条)を取り入れつつ、登録主義を採用した。

と流すと理解の深さを伝えることができます。


H26過去問 弁理士 論文 商標法 【問題Ⅰ】 (2)

(2)登録主義との関係において、いわゆる先使用権が認められている理由を述べよ。

 単なる「先使用権制度の意義」ではなくて、「登録主義との関係での存在意義」が訊かれています。一言でいえば、過誤登録の救済規定ですね。題意を取るのが簡単ではない設問ですが、設問(1)との繋がりで「登録主義の弊害を是正」する規定と考えると、先使用権は、その弊害(過誤登録による)への救済措置であることに気付きます。

 青本の32条にある「本条の存在理由は本来的に過誤登録の場合の救済規定である。すなわち、本条所定の未登録商標がある場合は、他人の出願は必ず四条一項一〇号に該当するはずだから他人の商標登録があるわけはないが、誤って登録された場合に、あえて無効審判を請求するまでもなく、その未登録周知商標の使用を認めようというのである。」をベースに再現すれば良いでしょう。

2.登録主義の弊害是正措置としての先使用権(32条)

 (1)周知商標と同一類似の商標は登録されない(4条1項10号)。

 (2)しかし、登録主義下では、過誤登録による周知商標の使用制限が起こり得る。

 (3)そこで、登録主義の弊害を是正するため、周知商標の先使用権を認めた。


H26過去問 弁理士 論文 商標法 【問題Ⅱ】

 クイーン株式会社(以下「甲」という。)は、「スーパーアマロ」からなる文字商標について「化粧品」を指定商品とする商標登録出願を平成22 年1月10 日にし、平成22 年7月10 日に商標登録を受けた。甲は、平成22 年7月下旬頃から、商標「アマロ」を付した「香水」の販売を開始し、現在に至っている。


 アマロスタイル株式会社(以下「乙」という。)は、平成15 年1月頃から「サプリメント」を製造し、これに商標「AMALO」を付して販売を行っていたところ売れ行きが良く、平成18 年1月頃には、商標「AMALO」は乙の業務に係る「サプリメント」を表示するものとして著名となり、乙は、需要者の間において「アマロ」の略称で呼ばれるようになり現在に至っている。また、乙は、業務を拡大し、平成18 年3月頃から「化粧水」を製造し、これに商標「AMALO」を付して販売し始めたところ、平成22 年3月頃には、商標「AMALO」は乙の業務に係る「化粧水」も表示するものとして周知となった。

 そこで、乙は、平成25 年12 月10 日に商標「AMALO」について、「サプリメント,化粧水」を指定商品とする商標登録出願をしたところ、当該商標登録出願に係る商標「AMALO」は、甲の登録商標「スーパーアマロ」が引用され、商標法第4条第1項第11 号により商標登録を受けることができないとする拒絶理由の通知を受けた。

 この場合、平成26 年7月6日を基準に、以下の設問に答えよ。
 なお、指定商品「化粧品」と指定商品「化粧水」は類似し、指定商品「化粧品」と指定商品「サプリメント」は類似しないものとする。「香水」は指定商品「化粧品」に含まれるものとする。
 解答に際して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。


 登録商標が「スーパーアマロ」に対し、使用商標が「アマロ」である点で、50条(不使用)と51条(不正使用)の取消審判の可能性がある点をメモします。

 さらに、「著名」から4条1項19号、「略称」から4条1項8号、「周知」から、4条1項10号、15号の可能性をメモし、各設問の答案構成に移ります。

 なお、「平成26 年7月6日を基準に」の条件明示がなくても、論文試験の当日を基準に判断することが必要です。


H26過去問 弁理士 論文 商標法 【問題Ⅱ】 (1)

(1)乙の出願商標「AMALO」が拒絶理由(商標法第4条第1項第11 号)に該当す
るかについて説明せよ。


 典型問題ですね。4条1項11号の3要件「他人」、「先願先登録」、「同一類似」は直ぐに引き出しから出せるようにしておく必要があります。貸与条文集を見て要件整理を始めると時間が足りません。事前に準備しておきましょう。

(4条1項11号)

 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

 他人の先願先登録商標の「スーパーアマロ」と出願商標「AMALO」の類否判断で得点差が付く問題です。設問(2)で「甲の登録商標「スーパーアマロ」と乙の出願商標「AMALO」が類似する場合」とあるので、「類似(あるいは条件付けで類似)」と結論付ける方がスムーズです。

 「スーパーアマロ」が一連一体称呼されない限り「スーパー」と「アマロ」で分断(分離観察)され、「スーパー」は形容詞的文字ゆえ識別力を発揮しないと判断し、「アマロ」が要部として「AMALO」との類否判断に持ち込みます。少なくとも称呼が同一として両商標は類似と結論付けるのが良いと思います。

  審査基準に、『形容詞的文字を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。(例) 「スーパーライオン」と「ライオン」』とあり、類否判断として使えますが、「審査基準によれば・・・」といった論証は致命的になりますのでご注意を。


 項目立て(答案構成)は、要件定立→当て嵌め→結論とすれば良いでしょう。字下げ(インデント)も忘れずに。

設問【Ⅱ】について、

1.4条1項11号の該否

 (1)3要件定立

 (2)当て嵌め

   ①「他人」、

   ②「先願先登録」、

   ③「同一類似」

    (ⅰ)指定商品「サプリメント」について、

    (ⅱ)指定商品「化粧水」について、

 (3)結論(該当する/該当しない)


H26過去問 弁理士 論文 商標法 【問題Ⅱ】 (2)

(2)甲の登録商標「スーパーアマロ」と乙の出願商標「AMALO」が類似する場合、乙は、指定商品「化粧水」について自己の商標登録出願に係る商標「AMALO」の商標登録を受けるためにどのような法的措置をとることができるか、要件を検討した上で説明せよ。
 ただし、甲と乙との交渉は考慮しないものとする。


 4条1項11号の拒絶理由通知に対する措置も典型問題です。主要な項目は落とさず、どこまで項目を拾えるかが合否の分かれ目です。

 対処措置はいわゆる「もらう」、「かわす」、「つぶす」の3つありますが、「もらう」は「甲と乙との交渉は考慮しない」とあるので除外。「かわす」は、指定商品が「化粧水」のみなので除外。したがって、「つぶす」手段(取消審判、無効審判)の拾い上げと要件当て嵌めの検討をすることになります。

 措置(手段)を記載する場合は、その手段を採る理由(効果)を必ず記載しましょう。記載の流れとしては、「(ⅰ)手段→(ⅱ)効果→(ⅲ)当て嵌め→(ⅳ)結論」として定型化しておくと、記載漏れを防止できます。

 51条の要件に「故意(主観的要件)」があり、この当て嵌めで得点差が出る部分です。本問の場合は、「著名」「周知」となっている事実から積極的な当て嵌めを行い、「故意が推認できる」とした方が良いでしょう。

 4条1項19号も同様に、「不正の目的(主観的要件)」に対しは、「著名」の事実からの積極的な当て嵌めを行い、「不正の目的が推認できる」とした方が良いでしょう。

 文末処理(結論)は、「措置を採ることができる。」としましょう。項目立てのインデントも忘れずに。

1.取消審判の請求

 本手段を採る理由(取消審判の効果(54条1項、2項)

 (1)50条の要件当て嵌め、結論

 (2)51条の要件当て嵌め、結論

2.無効審判の請求

 本手段を採る理由(無効審判の効果(46条の2)

 (1)4条1項8号

 (2)4条1項10号・15号・19号


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