商標法(改正)

【現行法】 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

【法改正】 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。


 「色彩のみ」を保護対象とすべく、色彩が単独構成要素となるよう改正されています。「音」は明示的に保護対象に加えられています。その他の「動きの商標」、「ホログラムの商標」、「位置の商標」は明確に規定されていませんが、保護対象を規定する本条に含まれるとされています。

【現行法】 商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標

【法改正】 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標


 "便乗"改正の一つでしょうね。商標の保護対象の拡充という大きな改正に隠れて、条文の不備を"こっそり"と解消。旧18号では「役務」を含まない規定であったが、「役務」を含む規定に変わった。大きな論点の一つが無くなったことになりますが、3条1項→3条2項→4条1項18号の典型パターンは、これからも出題の可能性がありますので、十分勉強しておきましょう。

 「機能を確保するために不可欠な立体的形状」から「当然に備える特徴」に変わった点も要注意です。規定上は、「形状」以外の「特徴」も含まれることになります。「色彩」や「音」、将来的な「におい」を想定した規定でしょうか。短答の問題として、「機能」を「形状」に変えた出題も想定されます。

 同趣旨の意匠法5条3号の規定の改正はなく、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」は登録を受けることができません。口述の対策としては、「形状に着目した場合に不可欠な形状のみからなる意匠」と解釈すべき点を再確認しておきましょう。

【現行法】 なし

【法改正】 次に掲げる商標について商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない
1号 商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標


 色彩と音の商標以外にも、「動きの商標」も保護の対象となっています。同趣旨の意匠法6条4項の規定「意匠に係る物品の形状、模様又は色彩がその物品の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。」との違いを抑えておくことが短答の勉強法として重要です。

 また、「音」が規定に入っていないのは当然ですね。引っかけ問題として、「音」を入れた短答の出題があるかもしれません。注意しましょう。

 視点を固定した状態で変化する商標だけでなく、視点を移動して変化するホログラ商標も本号に該当します。

【現行法】 なし

【法改正】 4項 経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。

5項 前項の記載及び物件は、商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならない。


 おそらく、音、色彩、動き、ホログラム、位置に係る商標登録出願は本項に該当することになると思われます。4項違反は準特18条の2で出願手続きの却下。5項違反は拒絶理由・無効理由となります。短答で狙われそうな条文です。

 4項、5項に関連する他の改正法をまとめておきます。


[15条3号(拒絶査定)] その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。

[46条3号(無効審判)] その商標登録が第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたとき。

[27条3項] 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。

 4項の記載(または物件)は、登録商標の権利範囲を規定することになりますので(27条3項)、その記載(または物件)が商標登録を受けようとする商標を特定できなければ、拒絶理由(15条3号)、無効理由(46条3号)の対象となります。

【現行法】 なし

【法改正】 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標


 いわゆる構成態様の規定である3条6号「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に対応する、いわゆる使用態様に関する規定が新設されました。

 判例ではおなじみですが、商標的使用態様でない場合は商標権侵害を構成しないことを明文化した規定です。

 商標法の中で難解な条文の一つと言われている26条ですが、総括条項として本号が追加されたことから、論文の勉強法としては、「構成態様と使用態様の相違」に関する一行問題が出題される可能性がありますので、十分勉強しておくことが重要であると言えます。

 論文の事例問題でも頻出の効力の制限規定(26条)ですので、日ごろの答練での記載練習を怠らないようにしておきましょう。

 それにしても、改正法解説書が発行されるのが待ち遠しいですね。

【現行法】 ・・・又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、・・・

【法改正】 ・・・又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、・・・

 著作隣接権との抵触が追加されています。短答で狙われやすい改正点です。著作隣接権は著作権法89条に規定されています。


第八十九条  実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。

6項 第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という。

第九十二条  実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。

 著作隣接権との抵触とは、どのようなケースなのでしょうか?

 甲さんが作詞・作曲 → 当該作詞・作曲を乙(歌手)が実演 → 当該実演に依拠・類似した「音の標章」を丙が出願し登録 → 丙がテレビ放送で当該音の標章を広告に使用した場合を想定してみましょう。

 このケースでは、丙による当該登録商標の使用(音の標章を発する行為)をする権利と、乙(実演家)の放送権(92条)とで抵触が生じます。

[2条3項9号] 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為


 「具体例」で説明できるレベルの理解力が無いと、短答試験の突破は難しいと言われています。このように自分で具体例を考え、条文に当て嵌めて見る勉強法は非常に有効ですので、強くお勧めします。

【現行法】 なし

【法改正】 前項の審判は、利害関係人に限り請求することができる。

 現行審判便覧には、以下の解釈基準が規定されています。今回の改正で、確認的に規定されたことになります。

(2) 他方、商標登録の無効審判(商§46)については、少なくとも法文上は請求人適格に関しては何も規定されていない。しかしながら、昭和34年法改正の経過(注1~2)における立法の趣旨(国会の審議における政府委員の説明などによる)からみて、法条に「利害関係人」の字句がなくても民訴法の場合と同じく「利益なければ訴権なし」の原則が適用されるという解釈を採るものとする

【現行法】 なし

【法改正】 前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。


 70条1項と2項は専用権、禁止権を「色違い類似商標」へ拡大する規定です。同条3項は不正使用取り消し審判(51条)の規定は「色違い類似商標」には拡大しないとする規定です。

 70条の勉強法としては、昭和54年の過去問に「商標法第70条について論ぜよ。」とする一行問題が出ていますので要注意です。今回の改正で「色彩のみからなる商標」には上記「拡大」と「非拡大」の規定は適用しないとなり、ややこしさが増しています。受験会場本番(論文、短答、口述)で混乱しないように事前に整理しておくことが重要です。

 また 「色違い商標」は、類似する場合と類似しない場合で、51条の規定適用がどうなるか?といった有名な典型問題がありますが、忘れた方はこちらも含めて事前に勉強しておきましょう。

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